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繁殖
胎生魚の雌雄の見分け方ってご存知ですか?
尻ビレを見れば初心者の方でも簡単に見分けがつきます。まずは論より証拠、以下の画像をご覧ください。

赤丸で囲んだ部分の鰭が尻ビレという部分です。
雄は精子を雌の体内に送り込む際に、この鰭の先端を雌の排泄腔に当てます。
棒状に尖った鰭を伝わって精子が受け渡されるのです。
というわけで、この特徴が見られる個体が雄です。
グッピー・プラティ・モーリー・ソードテール・バリアタスに共通な見分け方です。

注意するべきは生まれてしばらくの間は、雄もこの鰭が下の画像の個体ように三角に開いているということです。
順調に育てば1ヶ月内外でだんだん尖ってきますが、育て方が悪いと2ヶ月近くになっても扇形のままなので、雌しか生まれなかったと勘違いする方がいます。

上の画像の個体と違って、雌は成体になってもこの部分の鰭は扇形に開いたままです。

プラティのように雌雄とも色彩や体型に大きな差がない種は、この部分で見分けることになります。
ソードテールはこの部分の他に、雄の尾鰭の下端がソード状に伸びるので、それで見分けることも可能です。
ただ、ソードが伸びるのが遅い個体や、プラティとの交雑によってほとんど伸張しない個体もいますので、尻ビレと合わせてご判断下さい。
グッピーの場合は、雌雄で色合いや尾鰭の形の違いが顕著なので、成熟した個体なら尻ビレを見なくても判別できます。

繁殖させるためにはこのような特徴を持つ個体を最低でも一匹ずつ(1ペア)は購入してこなくてはなりません。
お店の水槽内で雌雄いっしょに売られている場合が多いので、すでに受精した卵を持っている可能性が高いですが、万一体調を崩すと卵がダメになることもあるので、初めての購入はペア買い、それもできたら数ペアにしたほうが確実です。

購入時の状態にもよりますが順調なら
1〜2ヶ月以内に最初の産仔を見ることができます。
産仔が迫っているかどうかを判断する方法が昔からいろいろ伝わっていますが、ビギナーの方がそれを知っても初産の時期を正確に知るのは正直言って難しいです。
産卵箱は用意しておくべきですが、その前に飼育水槽を水草だらけにしておきましょう。ある日帰ってきて腹が萎んでいるのに気づいたら、急いで水草の中を探します。
稚魚を見つけたら産卵箱に入れて保護しましょう。
産むところを見たければ次はだいたい1ヵ月後です。産後20日少々経ったら、今度は産卵箱に入れておけば出産シーンを観察できる可能性が高くなります。

稚魚の育成

餌の種類
@成魚の餌を細かくつぶしたもの
食べますし、充分育てられますが硬いものは避けましょう。
A稚魚用粉末飼料
すりつぶす手間がなく簡単に与えられます。@に比べて成長が早いなどという効果は、私は感じませんでした。
B殻剥きブラインシュリンプ
あくまで私と知人たちの例ですが、好んで食べるものと、@やAにくらべてむしろ嗜好性が落ちるものもいました。
好んで食べて個体たちは、@やAよりも成長が早めでした。
Cブラインシュリンプ幼生
ブラインシュリンプの卵を孵化させて幼生を与えるものです。生まれたての稚魚でもよく食べてくれます。
よく食べる上に栄養価が高いので、成長が著しく早いです。
理想的な餌ですが孵化させるのが面倒なのが玉に瑕と言ったところです。

餌の与え方
生まれたばかりの稚魚は動きが鈍く、摂餌行動も緩慢です。
成魚なら自分から進んで餌に向かいますが、生まれたての稚魚は餌がそばに漂ってきて初めてパクリという感じです。
そのため、浮上性の餌を水面にパラパラまいたくらいでは、なかなか食べに来てくれません。
稚魚用の飼料などをそばに沈めてあげましょう。こういうときに上述のブラインシュリンプ幼生であれば、餌自身が自ら泳いで稚魚のそばに行ってくれるので楽です。多少食べ残してもしばらく生きているので、食べ残しで餌を汚すことが少なくなります。

与える回数は一日2回くらいでいいでしょう。常に自宅にいる方なら、3〜4回に分けて与えてもいいです。
たまに休日だからといって急に何回も与える方がいますが、いつものペースを崩さないようにしたほうが水質の急変を避ける意味で無難です。

成魚との同居
稚魚の数にもよりますが、大き目の産卵箱なら1〜2週間はその中で育てることができます。その後は可能であれば、稚魚用の水槽に移して広々と育てれば良い個体に育ちます。
こうして育てた一番仔たちを成魚と同居させるのは、体長が15mmほどに達するのを待ったほうが無難です。

よくある質問

Q、胎生魚は弱アルカリ性じゃないと飼えないんですか?
A、弱酸性でも飼えます。怖いのは弱アルカリ性に居た個体を簡単な水合わせ程度で弱酸性に入れたり、その逆であったりなど短時間で水質を大きく変化させることです。
特に外国産のグッピーなどは弱アルカリ性で育成されていることが多いので、育成当初はできるだけその環境に合わせてあげるのが無難です。落ち着けば幅広い環境に適応します。

Q,買って来てもすぐに調子が悪くなります。どうしてでしょうか?
A,飼育の予備知識すら無くいきなり飼い始めた方の場合は、どうしてですかと問われても考えられる原因が多岐にわたりすぎて答えるのは不可能です。
濾過細菌のことや、なぜ水替えが必要なのかとか、pH等水質のことなど基本をしっかり理解している方であれば、その原因のほとんどは魚が悪いといえます。
『魚を選びましょう』の項目で述べたことを守って、調子が良い魚を購入してください。ここを誤らなければ、胎生魚は飼育で悩むことは無いといっても過言でない魚種です。

Q、胎生魚は塩を入れたほうが調子が良いと聞きましたが本当ですか?

あながち嘘とはいえませんが、大切な濾過細菌に影響を与えるので不用意に塩を入れるのは止めましょう。塩は病気治療などでやむをえず使うものであって、漫然と使用するものではありません。
もし塩を使用しなければ調子が上がらないようであれば、環境や飼い方に問題があると自覚しなくてはなりません。

Q,国産と外国産のグッピーはどうやって見分けますか?
一般にペア200〜300円程度ならほぼ外国産です。国産は品種名が明記されたものならペア1000円内外であることが多いです。ただし、お店によってはセールなどで外国産並みの価格で売っていることもあるので、決め手とはいえません。
また、国産は尾鰭が美しいトライアングルで、それに対して外国産は角が丸いとおっしゃる方もいますが、外国産でもそこそこきれいなトライアングルの個体もいますので、ビギナーの方が見分ける決め手とはいえません。
わからなければ「これは国産ですか?外国産ですか?」とお店の方に聞くのが一番です。

 日本胎生魚協会会長 永井 邦昌