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原種という言葉のイメージ

原種と言いますと皆様どういった印象をお持ちでしょうか?

地味な魚であるとか、マニアックであるといった印象の方が多いのではないでしょうか。
一口に原種と言いましても奥が深く、そして広いので、(私を含め)のめり込んでしまうと中々抜けられません。

そんな原種の定義をここでは記したいと思います。

先ず、原種とは何か。これほど難しい定義も無いと考えます。

皆様の一番身近な原種といえば先ず間違いなくPoecilia sp. Endler’s Livebearerでしょう。

簡単に言うとエンドラーズです。これらはPoecilia wingeiの学術論文の中で、P. wingeiではない(Poecilia reticulataとのハイブリッドの可能性がある)と否定された事は皆様ご存知の事だと思います。

採集者のArmando Pou氏と遣り取りをする中で、彼は「それらはPoecilia reticulataP.wingeiとはまた別の種への進化の分岐途中であると考えている」と仰います。

しかしここで話す事はそういったレベルの問題ではありません。
これもご存知の通りエンドラーズは
1992年に日本に輸入され、グッピーと交配された個体がエンドラーズとして蔓延しました。
現状でも似たような事は起こっており、国産グッピーのエンドラーズとして、つまりはグッピーと交配されて売られているのが殆どです。
これはグッピーと交配された事を明記して売られていれば良いのですが、そうでないケースが殆どだと思います。慣れれば実際に見れば違いは判ります。

さて、これは原種と言えるのでしょうか?
否、これらのケースは原種と言う観点では当然否定されるべきでしょう。

しかし私自身エンドラーズハイブリッドを否定するつもりは更々ありません。

寧ろそれで国産グッピーの新たな可能性が引き出されるのならそれは素晴らしい事だと思います。

しかし、です。ここで原種に立ち戻り考えた時、果たして皆様が購入されたエンドラーズは本当の意味でエンドラーズと言い切れるでしょうか?ハイブリッドである可能性は??…ともし考え悩まれるのでしたら、信頼のできる方の下に譲って頂くか、信頼の置けるショップで購入する事が重要であると考えます。


ここではエンドラーズに準えましたが、これらはエンドラーズに限った事ではありません。モーリー、ソードテール、ヴァリアタスの殆どが改良されてあるであろう種は沢山います。そしてこれらにも同じ事が言えますし、それ以外でもハイブリッドの可能性は否定できません。原種を入手するにはその相手がどれだけ信頼に値するか、と言う事が重要であるでしょう。

この最低限のモラルは原種キーパーとして守るべきであると思います。地味だから、図鑑に載っている魚に似ているから、原種として売られていたから、などの理由は原種と同定する判断材料にはなりません。

私はこの辺りの要因が原種としての定義であると考えます。

さて、一つ問題を提起してみます。
話はエンドラーズに戻りますが、これらは本来、採集者Armando Pou氏の下では採集年代、場所別でバラバラの表現で飼育されているそうです。それを個人が「固定」したものが多くの皆様が飼育されているエンドラーズなのです。

これは同じくP. reticulata種にも言えることで、日本に輸入される殆どの本種の表現はバラバラです。

有名なのは「ビター‘94」が挙げられます。皆さんご存知であるとは思いますが、この系統の呼称は文字通り、当時魚の輸出を手がけておられたフリードリヒ・ビター氏(旧ビターエキゾチクス代表)に由来します。

幸運にも、ビター氏と日本でお会いする機会がありまして、その時尋ねてみたのですが、ビター氏は本種が「輸出当時の魚とはかけ離れた、まるで違う魚になっていた(判らなかった)」と仰いました。

これも有名な逸話ですのでご存知の方も多いであろうとは思います。2009年に見た目は限りなくP. reticulata種に近い、というより見た目は同じな種が新種として記載されましたね。それがPoecilia obscuraです。この種はトリニダード東南部に生息しています。Poecilia obscuraで検索すれば画像が見られます)
これらは採集河川別でほぼ表現が固定されています。ある程度は表現が似通っていても、バラバラであったがここ4年弱で固定化されていったのでは?と推測しています。


原種の維持

原種を飼育するに当たって、一つ大切な作業があります。

それが選別です。

原種であるからそんな事は不要だと考えておられる方が大方だと思いますが、種の多様性に起因し原種も変化していきます。故に「原種こそ選別が重要である」と私は考えます。つまり、この「固定」という行為は好みによる「改良」なのか、「選別淘汰による結果」なのか。

答えは、

…恐らく形としては永遠に得られないと思います。それは皆さんそれぞれで考える事であり、そしてその「考える事」というのが非常に重要な原種飼育のファクターなのですから…
そして、その種はいつ、何処で誰に採集された個体群なのか、というのが原種にとっては重要である事が挙げられます。

一つはこの「ロカリティ・インフォメーション」が付く事でハイブリッドである可能性が劇的に減ると言う事です。ハイブリッドであることが皆無と言わないのは、エンドラーズでは最近Laguna de Patos 1997と表記された魚、(殆どがハイブリッド)が蔓延っているからです。私が知る限り、1997は出回っていないはずです。これは199798が略された結果なのは明白ですね。
しかし「本物の1997」も存在するのです。
エンドラーズの殖やし易さ故に、数年で変わってしまうのは仕方がありませんが、前述の通り原種ならきちんとした表記で、ハイブリッドならそうと確りと表記して頂きたいものです。これは以下で述べる魚についても言える事です。


2011年に、リオ・グリハルバのインヴォイスで原種プラティ(Xiphophorus maculatus)が輸入されましたが、以前、本会のメンバーが頑張って維持していた同じロカリティであるプラティとは体形、表現が全然違います。

しかし、だからと言って絶対にリオ・グリハルバでは無いという確証も無いのが問題を複雑にしています。

一口にリオ・グリハルバと言っても、川は広いので採集地により表現が違っても不思議ではありませんから…

X. maculatus(プラティの原種)はP. reticulata程表現にばらつきはありませんし。
もう一つは原種では環境破壊を主な理由に本来の生息地から消えてしまいそうなものが多くおります。もし野生絶滅した場合、その場所で採集された個体群と識別できた場合は保護活動、放流活動も可能なのです。実際にそういうプロジェクトも実行されています。当会でも有名なFish Ark(魚の箱舟)然り。

具体例を挙げますと、Xiphophorus couchianus(野生絶滅であろう種)は私が海外から購入する際に、売り手は「これらは純系だから、同種の別系統も含み、ハイブリッドはさせないで、キープして下さい」と私に告げました。これは上記の種に限った事ではなく、それだけ純系≒「ロカリティ・インフォメーション」は重要であるという事ですね。
私は「これだけ重要なのですよ」と提起するだけで考え方の押し売りは致しません。ただ、皆様のご参考になれば幸いだと考えガイドラインを示しているのです。

さて、ここからは、最近では陰りも見え始めていますが、少なくともP. reticulata種よりはという意味で、原種のエンドラーズは人気があるのに何故原種グッピーつまりP. reticulata種は人気があまり無いのか、(中南米から時折輸入される本種は一部では確りと維持されている方もおられるのも事実ですので、一概に人気が無いとは言えませんね。)という点についてお話したいと思います。

これは一つはP. reticulata種はマラリア等、蚊が媒介する病気を絶やすため、世界各国の政府が放流してしまったという事があります。我が国のカダヤシ、(Gambusia affinis)と同様です。本来の生息域にも放流されていますので、由々しき事態です。
我が国には幸い冬と言うものがあり、中南米産の彼らは越冬できない、温泉地や沖縄以南では野良グッピーはいますが。

不幸な事にカダヤシは北米産であることから、耐寒性があり、政府が文字通り蚊絶やしのために放流し、今更になって特定外来生物法などという馬鹿げた法律を作り、飼育繁殖(飼育のみなら届出をし、許可を得れば可、繁殖は不可)を禁止してしまいました。そしてその要注意種としてグッピーがリストアップされています。因みにGambusia holbrookiは一時期はカダヤシの亜種とされていました。特定外来生物の指定は種としての指定ですので、亜種も含みますが、幸い今では独立した種になりました。しかし、未判定外来生物に指定されています。つまり販売、飼育繁殖等は構いませんが、輸入には政府による許可が必要なのです。そして、いざ申請をすると、お役人は面倒なのでしょう、理不尽な事に殆どが特定外来生物に指定されてしまいます。
お気をつけ下さいね。

話を本題に戻しましょう。つまり、原種グッピーは殆ど原種ではなく、「野良≠ワイルド」であるからであるという事が言いたかったのです。これはグッピーに限った事ではなく、Limia vittataも流通しているのはアウレアというアクアリウムストレインで、原種は三毛のブチは入らないそうです。(アウレアも魅力的なのは確かです)
このように原種にも本当の原種とアクアストレインが存在します。

温暖な地域では色々な飼育種が逃げ出したり、放流されたりしてしまうケースが多々あります。その為、本来の生息地からかけ離れた場所で帰化しているというのが当たり前の如くあり、原種、改良種、引いては魚種問わず、飼育者のモラルとして、放流するくらいならショップに引き取りをお願いしてみるか、最悪は可哀想ですが殺処分してしまいましょう。リストアップされる事を考えるとその方が余程可哀想です。
ここでも先程お話した「ロカリティ・インフォメーション」というのが重要であるという事がお解かり頂けると思います。そしてもう一つはエンドラーズにはP. reticulataにはない色彩、(所謂エンドラーズ斑等)をしたものが多いという事が挙げられます。しかし、放逐されたグッピー(あくまでグッピー≒P. reticulata)にも魅力的な魚が多いのはここ数年、石垣島、西表島、インドネシア(バリ島、スラウェシ島)、マレーシア、シンガポール等、現地で実際に見て個人的に感じるのも事実なのです。そしてそれらはエンドラーズにはない魅力もありますので、前述のように、確り維持されているかたもおられるというのもまた事実ですね。

また何年か前にはPoecilia sp. Orange lineや、Poecilia sp. Three spotPoecilia sp. Andes等が輸入され、話題になったのは皆様記憶に新しいかと思います。最近は目にしませんが、今でもその人気はあまり衰えてはいませんね。因みにインヴォイスではMicropoecilia sp.とされていましたが、正しくはPoecilia sp.若しくはPoecilia cf. reticulataだと思います。(個人的に所謂アンデスメダカ、スリースポット、はP. reticulata種、オレンジラインはPoecilia cf. reticulataだと思っています。*括弧内の記述は「個人的に所謂」と記載している通り、現段階では著者の見解となります。

矛盾しているのは重々承知です。しかしその辺りはやはり個人個人の好みで判断するものでしょうから。何度も言いますが、私個人の考えを押し付けるものではありません。また、原種で、産地情報も何もないというものも多く存在します。

これも一種の矛盾ではありますが、情報がないからと言ってそれが原種ではないとは言えません。入手元が信頼のおける方ならば、余程改良種ライクでもない限り、原種として入手されたからには原種として飼育してやることも大切だと思います。


これは私個人の経験なのですが、数年前、グァテマラン・プラティ(本サイト、原種胎生魚図鑑をご参照下さい)を輸入したくて、アメリカで探してもらったことがあったのです。結果、当時幼魚で輸入したのですが、育ててみるとカラフルな改良種ライクの魚になったということがあり、画像を輸出者に送ったところ、彼は「これは改良種に間違いない、申し訳ないことをした」とのことで、失敗したこともあります。

少し脱線しますが、ようやく本物を輸入できましたが、全ての個体が鯱みたいな姿の明らかな奇形だったこともありました。

この辺りのモラルも原種キーパーには遵守して頂きたいです。前述のカダヤシ、奇形魚にしても、いいえ、全ての生物に言える重要な事があります。それは「その生物に罪は無い」と言うことです。そう、全ての命はその飼育者の手に委ねられているのですから…

改良種には改良種の、原種には原種の「守るべきもの」があるから皆様がそれらを飼育されているのだと再認識して頂きたいです。そしてその中に「愉しみ」を見出して頂ければ幸いです。

最後に、最近では前述のP. obscuraPoecilia sarrafaeMicropoecilia branneriと見た目は一緒)等、既存の種(派生元)とどう違うのか、属としてMicropoeciliaが妥当なのか、Poeciliaが妥当なのか、等々混沌としていますが、先にも述べたとおり、「その生物には何も罪はない、命の重さは変わらない」ということを念頭に皆様それぞれで飼育を愉しんで頂ければと思います。

Written by. Yuichi Mandai